近所に好きなパン屋さんがある。ハード系のパンだけを売っていて、外はカリッと中はしっとり。
私たちはこのお店のパンのことを、「喉が渇かないパン」と言っている。
普通のパンを食べる時は飲み物を欲するけれど、このお店のパンはイイ感じにしっとりしているので、飲み物要らず。
パンの生地が美味しい。
パンは発酵と共に熟成するので、短時間での量産を求めて発酵を早めると、パンの形はしているけれど、熟成が追いつかずに旨みの無いパンが出来上がる。
ハード系のパン(バケットなど)は発酵が遅い。卵や砂糖を使わないシンプルな生地のパンほど、発酵が遅い。
ホテルでパティシエをしていた頃、ケーキだけでなく、ラウンジで販売するバケットも作っていた。
そのバケット生地をこねる際、発酵促進剤の「マックスパワー」というのを添加していた。これを添加することで、発酵するのが早まる。
不服だったので、上司に「マックスパワーを使わず、ちゃんと時間をかけて発酵させたバケットを作りたい。」と言ったら、
「うちはパン屋じゃない。バケット一つに、そこまで時間はかけられない。」と却下された。
「そこまで時間をかけられない? ホイロ(発酵器)に入れて放置している間に、他の仕事できるじゃねーか。
発酵完了するまでずーっと生地を眺めて手を止めてるわけじゃないだろ。こんスカポンタンが。」
と思ったけど、口には出さなかった。
「フィリップ・ビゴのレシピ本に、マックスパワーなんか載ってねーし。そんなもん使いたくねーし。」
と思ったけど、口には出さなかった。
*フィリップ・ビゴさん:フランス人のパン職人で菓子職人。当時、彼の本には大変お世話になった。2018年に78歳で死去。
菓子作り、パン作りの仕事では、ケーキ屋とパン屋とホテルでの経験があるけれど、ケーキ屋のオーナーとパン屋のオーナーは、品作りへの想いが強くて面白かった。
私が勤めたケーキ屋、パン屋、ホテルの中では、ホテルがもっとも効率重視(低コストで早くたくさん)だったように思う。
ご飯、パン、蕎麦など、美味しい炭水化物に出会うと感動する(笑) そして、美味しいパンを食べると、パンを作りたくなる。
331Theaterでオヤツ作りに使っているスペルト全粒粉は強力粉(パン作りに適している粉)なので、
それを使って、パンも作ってみようかな。全粒粉でパンを作ったことはないので、楽しみ。
(^_^)(^_^)
サミー